かつて“戦魔”と呼ばれ恐れられた傭兵ヴァレルは、今や戦いから身を引き、辺境の小村で村の娘アリエに慰めを見出して暮らしていた。しかし、ある日“処刑屋”と呼ばれる二人連れの訪問を受け、彼の昔の傭兵仲間であり、弟子でもあった界術師のレイヴンの脱走を知らされる。それは彼を過去に戻す合図だった…

 友人から「読んでみろ」と言われたので、久々に日本のファンタジーに手を出してみた。考えてみると、日本製のファンタジーは馬鹿にしてたので、全然読んでなかったな。つーか、何冊か読んだ作品が屑同然だったから以降読む気にもなれなかった。本作だって紹介無ければ読むこともなかっただろう。

 しかし、これはびっくりした。

 物語を一言で説明するとファンタジー世界での痴話喧嘩。これだけで終わってしまう凡庸な作品なのだが、演出と、何より設定が興味深い。

 学生時代『指輪物語』を読んで、自分も何かファンタジーを書きたいと思って色々設定を考えていたりしたのだが、驚くべき事に、この作品の設定、極めて私の考えていたものに近い(特に魔法…ここでは界術か)。私がこの設定を考えていたのは約15年前だが、この作品が世に出たのも丁度その頃。才能のない私は設定で終わったが、ちゃんとそれを書いてる人がいたという事実。それが驚き。いるもんだな。こんな人間。なんか昔の思いが沸々とわき上がってきたよ。