存在の耐えられない軽さ
ミラン クンデラ Milan Kundera 千野 栄一
集英社 (1998/11)
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 いくつもの偶然が重なった結果出会ったプラハの有能な脳外科医トマーシュと片田舎で虐待されて育ったエルザ。二人は一緒に住むことになったが、トマーシュの女好きは彼女と一緒でも全く変わることが無かった。そんな二人を冷ややかに見守る芸術家のサビナの視点も交えて、プラハの春というチェコの激動の時代を通して描く。

 私は映画の方を先に観て、その完成度の高さとヴィノシュの可憐さにすっかり参ってしまった口だが、原作を読んで驚いた。映画とは全く別物。というか、原作はもの凄い哲学的な命題を持った作品だったと言う事実を知った。表題の「存在の耐えられない軽さ」も、そもそもは“あらゆるものの重さ”という命題から導き出されたものであり、哲学的、社会的、そして個人的な部分に到る、それぞれの“重さ”こそが重要だったのだ。そもそも形而上学的な作品を映画にするなら、ストーリーを追う事しか出来ない訳か。なるほどこういう映画の作り方もあるんだ。と逆に感心させてもらった。原作である本作と映画版は、いわば補完しあって出来上がっているので、もし映画を先に観て「面白い」と思った人だったら、是非本作は読んでいただきたい。