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同性愛で罪に問われ、懲役二年の判決を言い渡されたワイルドがその二年の獄中生活の最後に、時分自身の牢獄での生活と、そこから得た思想を友人のダグラス(同性愛の相手)に宛てた書簡。
限られた人に見せるための手紙や手記を作品として刊行するのは告白文学と呼ばれるが、第三者が読んで楽しめるものになるのは希有。それを可能としたのは著者の文学的センスと膨大な知識量。それに才能に他ならない。
ドストエフスキーもそうだけど、本当に人生における危機に直面した時にこそ、その人間の才能が問われるのだろう。特に牢獄にあってこそ、今まで自分が書いてきたことを全て総括した上、本当の喜びを書けたワイルドの実力は推して知るべし。良いものを読ませてもらった。