月に繭 地には果実〈下〉
福井 晴敏
幻冬舎 (2001/08)
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 ディアナカウンターとミリシャの戦いは互いに地上で発掘された核兵器と細菌兵器を双方が使用するに到り、泥沼の様相を呈してきた。そんな中でディアナカウンターからも見捨てられたディアナはグエンの力を借りて月へ戻り、全てを元に戻すことを決意する。発掘された宇宙船ウィルゲムによりついに宇宙に出る事に成功したが、月は月で、ディアナを亡き者にしようとアグリッパが待ちかまえていた。その中で徐々に明らかになっていくターンAの能力と、否応なしに戦いの中心に巻き込まれてしまうロランだったが…

 下巻の本巻でアニメ版とは大きくストーリーは違ってきた。シャレにならない被害と、憎しみ合い。その葛藤を経、大きな犠牲を払いつつようやく平和が得られるという、言わば著者の最も得意とする土俵へと引き込んだようだ。私はアニメ版の終わり方が好きだが、これはこれで大変面白い作品に仕上がっている。それにしても細菌兵器の中に“GUSOH”が入っているのは実に著者らしいところ。