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火星での植物発見、異星人とのファースト・コンタクト、木星軌道上でタイタンの生物との交信…宇宙科学の最先端を常に歩み続けてきたブラッドリィ=レナルズ。宇宙に全てを捧げた彼の政治的、精神的戦いを描いた作品。
ベンフォード作品は昔「夜の大海の中で」をなんと6年間に渡って読み続けた。私の読書履歴でもこれだけ長くかかった本は唯一だが、その一冊のお陰で特に70年代のSF的描写が大好きになってしまった経験あり。著者の作品を読んだのは本当に久々と言うことになるが、著者らしい描写で完成度は高い。科学の最先端にいながら、全てに失敗していることを自分一人で抱え込んでいる男の内面描写。読みやすい作品とはやっぱり言えないけど、静かな良い作品だ。