理系の小説

虐殺器官

 近未来。核を含め小国では次々とテロ活動と虐殺が続いていた。そんな中アメリカは特殊機関を用いてテロ首謀者の暗殺することで世界に安定をもたらそうとしていた。その暗殺機関に属するクラヴィスは、あるオペレーションでアメリカ人を殺せ。という命令を受ける。ジョン=ポールという名のその男は次々に繰り出される暗殺者をあざ笑うかのようにその手をすり抜けていく。やがてクラヴィスは宿命のライバルとしてポール暗殺に血道をあげるようになるが…

 未来世界における戦争のあり方をリアリスティックに描いた正統的なSF作品で、オチも含めて高水準な作品に仕上げられる。少なくとも私にとっては非常に好みの作品では確か。多くの小説や映画の引用も楽しめる。物語そのものはディストピアものになるんだろうか?

 ところで本作は表題である「虐殺器官」こそが唯一のオリジナリティで、この単一キーワードを長編にするために遣った時間は膨大なものになるだろう。様々な文献や映画から色々引っ張ってきて肉付けして、まさしく理系的な組み合わせで作り上げた作品でもあり。いろんな本から引用されてるっぽいけど、前に読んだ「うそつきの進化論」の一節が丸ごと書かれていて苦笑したり、明らかに何カ所か引用間違いがあったりするのも愛嬌の内か?パイソンネタがちりばめられているのがファンとしては結構嬉しい。

 この作品は先日友人からいただいたものなので、読んだよ。という報告がてら。
うそつきの進化論―無意識にだまそうとする心